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研究活動
経皮的電気刺激による仙骨部体圧分散効果についての研究
―臀部体圧分散用具を用いた検討―
小嶋 純二郎(*1) 正木 健一(*2)  紺野 浩一(*3)
Key words : Pressure sores(褥瘡)、Erectrical Stimulation(電気刺激)Body pressure dispersion implements(体圧分散用具)  
 
【緒言】

 褥瘡発生の本態は圧迫による組織の虚血性壊死であり、このため体圧分布の高い部位が好発部位となる。仰臥位臀部には全体重の約45%が分布し、この部位には褥瘡の約80%が発生する。なかでも仙骨部は最好発部位であり、全褥瘡の約50%が発生する。 著者は、経皮的電気刺激による仙骨部体圧分散効果について、体圧分布計、経皮酸素分圧及び二酸化炭素分圧計を用いて検討したところ、健常例では電気刺激により、圧力負荷を解放した場合と同様な体圧分散効果が認められたが、長期臥床例では認められなかったことを報告した。今回著者は、健常例のみならず長期臥床例に対しても、電気刺激による仙骨部体圧分散効果が認められる臀部体圧分散用具を考案し検討するとともに、褥瘡発生の外的要因に対する、この用具の有用性について検討、褥瘡予防用具の必要条件について若干の考察を加えて報告する。
 
【対象及び方法】
 
 健常男性及び体幹に屈曲拘縮のない長期臥床男性患者各5例を対象とし、体圧分布計(株)ニッタ、タクタイルセンサーBIGMATを用い、・安静仰臥位における、仙骨部体圧及び臀部体圧分布を測定、・経皮的電気刺激はSAKAI製LSI−210を用いて、左右各々の大臀筋及び中臀筋のmotor pointに導子を貼置し、25〜35mA、80Hzで手動にて同期通電を施行し、体圧変化を測定した。・また電気刺激による、仙骨部体圧分散効果をより増強させるために、著者が考案し、(株)イノアックコーポレーションにて制作された、独立した3気室より構成される臀部体圧分散用具(以下エアーパンツと略す)を図1の如く装着し、仙骨部体圧及び臀部体圧分布を測定、・エアーパンツを用いて同様条件の経皮的電気刺激を施行し、体圧変化を測定した。
 

(図1)製品化されたエアーパンツ
 
【結果】
 
・安静仰臥位における仙骨部体圧及び臀部体圧分布について、結果を表1に示す。仙骨部を中心とした、縦×横が 4×4 、4×12 、4×20 、4×28 の圧力値と、( )内には、仙骨部4×4 の圧力値を1.0とした場合の換算値を示した。健常例、長期臥床例ともに、全例において仙骨部が最高圧部位であった。また臀部体圧分布は健常例に比して長期臥床例の方が分布勾配が急であった。

(表1)
安静仰臥位における仙骨部体圧及び臀部体圧分
〔単位:mmHg〕
・電気刺激による仙骨部体圧の変化について、結果を表2に示す。健常例では電気刺激により、仙骨部体圧は191mmHgから80mmHgへと分散したが、長期臥床例では159mmHgから146mmHgとなり、分散効果は認められなかった。

(表2)
電気刺激による仙骨部体圧の変化
〔単位:mmHg〕
・エアーパンツ装着による仙骨部体圧及び臀部体圧分布の結果は、表3に示す如く、健常例では24.2、長期臥床例では17.0mmHgであり、仙骨部体圧の分散及び臀部体圧の均一化が可能であった。

(表3)
安静仰臥位における仙骨部体圧及び臀部体圧分布
(エアーパンツ装着時)
〔単位:mmHg〕
・エアーパンツ装着下で、電気刺激を施行した結果を表2に示す。健常例では仙骨部体圧は24.2mmHgから、刺激により12.2mmHgに減弱され、長期臥床例においても17.0mmHgから13.1mmHgへと仙骨部体圧の分散効果が認められた。
 
【考察】
 
 健常例においては、電気刺激による臀部筋群の収縮により、仙骨部に集中していた体圧は両側臀部に分散し得たが、長期臥床群では分散効果が認められなかった。これは臀部筋群が廃用性筋委縮を生じており、臀部筋群が収縮しても体圧を分散せしめるストロークが生じ得ないためと思われた。このため、その不十分なストロークを補うために、両側の臀部にスペーサーを挿入する目的で、臀部体圧分散用具を考案した。長期臥床例に対する検討では、廃用性筋萎縮を生じた臀部筋群が、電気刺激により生じるわずかなストロークで仙骨部体圧の分散効果を引きだすために、仙骨部が浮かび上がる直前の状態に電気刺激を加えることが、最もよい結果を得る実験条件であった。 製品化されたエアーパンツは、オムツカバー式の形状であり、中央と左・右の3気室より構成され、仙骨部には中央の気室が対応し、周囲の臀部には左・右の気室が対応する構造である。3つの気室間の空気が交通できるように連結して空気を注入していくと、はじめに左・右の気室に空気が入り、周囲の臀部が浮き上がった後、圧力分布の高い仙骨部には最後に空気が入ることになる。この際に臀部の圧力は均一となり、図1の如く水銀血圧計を接続しておくと、臀部の体圧も測定することが可能である。
 エアーパンツの装着により、健常例、長期臥床例とも充分な体圧分散効果を認め、かつ均一な体圧が得られることで、垂直応力の軽減のみならず、張力及び剪断力とも減少せしめることが可能であった。日常臨床でも均一化された体圧が測定できることは、症例別に、圧・時間曲線から体位変換のタイムスケジュールを立てることの可能性を示唆し、有用と思われる。また図2に示したように、電気刺激によって生じる両側臀部筋群の収縮は、臀部体圧が均一化された状態では、健常例のみならず長期臥床例においても仙骨部の体圧をより減少せしめる効果が認められた。
 
 
(図2)電気刺激による臀部体圧分布の変化(3D)
 現在種々の体圧分散用具が考案されているが、荷重による圧力の軽減には、より多くの面積で接触する必要があり、投影面積以上の接触面積を得るには、体表面の凹凸を緩衝し得る厚みを有することが必要条件である。今回の検討から、空気(流動体)注入式の分散用具全般において、過多の空気はかえって接触面積を減少せしめ、過少の空気は底つき現象を生じる危険性を有するため、底つきしない最少限度の空気注入が要求されるのであり、その条件設定の重要性が認められた。 本製品のような臀部に対する局所用の用具では、局所が浮き上がり、かかっていた荷重が背部などの別の部位に移動する問題点が認められた。また、装着式用具は装着時の締めつけ方により、組織の緊張度を高めることも可能と考えられ、今後の検討課題と思われた。さらに電気刺激は体圧分散効果のみならず、廃用性筋萎縮防止効果や、直接組織の血液やリンパ液の循環に対する効果も期待でき、臨床上の有用性についての検討が重要課題と思われた。
 
【結語】
 
 臀部体圧分散用具と経皮的電気刺激の併用により、健常例のみならず長期臥床例においても、仙骨部体圧の分散効果が認められ、褥瘡の予防、治療手段として有用と思われた
 
【文献】
 
1)小嶋純二郎:経皮的電気刺激による仙骨部褥瘡防止効果についての研究。日本パラプレジア医学会誌:140−141,1996.
2)Kenedi,R.M.,et al:Bedsore Biomechanics. University Park Press.Baltimore:301-310,1976
   
(*1) 小嶋病院 脳神経外科
(*2) 老人保健施設 東 海
(*3) 老人保健施設 みどり
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